
ロマンティック度 ★★★★★
ルーサー・ヴァンドロスはアメリカのR&Bシンガー。
ロバータ・フラック、ダイアナ・ロス、バーブラ・ストライサンド、アレサ・フランクリンなどのバック・ヴォーカルでの実力が認められ、1976年にソロ・デビュー。
甘いバラードをロマンティックに歌い上げ、1980年代のブラック・コンテンポラリーを代表する存在となった。
2003年に脳卒中で倒れ、その後復帰したものの2005年に54歳で死去。
最後のスタジオ・アルバムは自身初のビルボードNO.1を獲得した2003年の「Dance With My Father」。
そもそも彼の名前を知ったのはこのタイトル・ナンバーであり、グラミー賞のSong Of The Yearに輝いた「Dance With My Father」。
ルーサーが父親に捧げた曲で、俺の好きなリチャード・マークスとの共作という事で興味を持った。
壮大なバラードというわけではないがじわじわと心に染み入り、誰もが自分の父親を静かに思い起こすような名曲だ。
もう少し彼の曲を聞きたいと思い、偶然中古で見つけたのが今回紹介する「Songs」(1994)。
これまでにもアルバムにはサム・クック、スティーヴィー・ワンダー、ビー・ジーズなどのカヴァーを必ず収録していたらしいが、10枚目のスタジオ・アルバムとなる今作は13曲全てカヴァーで構成されている。
セリーヌ・ディオンやマライア・キャリーなどの作品で知られるウォルター・アファナシエフとの共同プロデュースのもと、CS&N、ライオネル・リッチー、シュープリームス、アレサ・フランクリン、ホイットニー・ヒューストンなどの楽曲をルーサー風にカヴァー。
60〜90年代にヒットしたオリジナルの魅力を生かしつつ、情感あふれるルーサーのヴォーカルによって上質な大人のポップスに仕上がっている。
まるで彼自身の持ち歌であるかのような錯覚に陥るほど見事に歌い上げているが、中には苦労した曲もあるらしい。
M7の「Ain't No Stoppin' Us Now」は何度歌っても上手くいかず、結局1ヴァースごと重ね録りしてようやく完成させたとか。とてもそうは聞こえないな…。
真っ先に歌う事を決めたのはM2「Killing Me Softly」(やさしく歌って)。前述のロバータ・フラックが'73年にヒットさせ、多数のアーティストがカヴァーしている名曲。
ルーサーは70年代中〜後期にかけ彼のバック・シンガーを努めており、ステージでは何度も共に歌った思い出深い曲だそうで、この選曲も当然だろう。
そして、このアルバムのハイライトと言えるのがマライア・キャリーとデュエットしたM3「Endless Love」。
オリジナルはライオネル・リッチーとダイアナ・ロスによるデュエットで、'81年に同名映画の主題歌として9週連続全米一位に輝いたナンバー。
もともと今回カヴァー曲集を提案したのはソニー・ミュージックの社長であるトミー・モトーラ氏。氏が選曲を考えている時に、当時妻だったマライア自ら曲を推薦&デュエットを名乗り出たというのが共演に至った経緯だそうだ。
原曲の良さもあるが、やはり素晴らしいのはシンガーとしてのルーサーの魅力。
囁くような包み込むような温かい歌声が心地良く、思わず聞き惚れる。
特に気に入ったのはアレサのカヴァー「Since You've Been Gone」と、ブロードウェイ・ミュージカル「ラ・マンチャの男」からのスタンダード・ナンバー「The Impossible Dream」。
ルーサーのロマンティックなヴォーカルを一層引き立てる、とてもドラマティックなアルバムで、この時期夜一人で聞くのにピッタリだな。

好感度 ★★★★★
スウィッチフットはカリフォルニア州・サンディエゴ出身の5人組ロック・バンド。
ジョン(vo, g)とティム(b, vo)のフォアマン兄弟とチャド・バトラー(ds)の3人で結成され、後にジェローム(g, key, vo)とドリュー(g)が加入した。
スウィッチフットとは、サーフィン用語でライディング時に足を入れ替える動作の事。
そんなバンド名と出身地からも想像できるように、メンバーは全員サーフィン好き。サーファーである事がバンド加入の絶対条件らしい。
'96年から活動し、メジャー・デビューを果たした2003年の4thアルバム「Beautiful Letdown」が250万枚を超えるヒットを記録。「Meant To Live」「Dare You To Move」などのヒット・シングルを生み、ビルボードTOP200に一年以上チャートインし続けた(ちなみに「Meant〜」のヴァース部分はオーストラリアのポップ・デュオ、サヴェージ・ガーデンの「Gunning Down Romance」に激似)。
この「Nothing Is Sound」(2005)はメジャー第2作・通算5枚目にあたり、日本デビュー盤。
3人のギタリストによる厚みのあるサウンドをベースに、海を思わせるパワフルでオーガニックな楽曲がバランス良く収まっている。
重厚なリフとキャッチーなメロディーのシングル曲「Stars」(MVでは水中で演奏)、ピアノとアコースティック・ギターの音色が美しいバラード「The Blues」、ミドルテンポのロック・ナンバーながらどこか寂しさも感じさせる「The Setting Sun」、ハードなロックが炸裂する「Politicians」など幅広いソングライティングが味わえる。
―と、ここまでは特に珍しくもないが、スウィッチフットの更なる魅力はジョンの書く哲学的な歌詞だ。
彼らはキリスト教徒である事を公言しており、初期はクリスチャン・ロックの場で活躍していた。メジャー・レーベルに移籍後も飾り気のない素直な感情を歌い上げ、支持を広げている。
飽和な社会の孤独を訴え、星空や太陽など自然の尊厳を歌い、世界の終わりが美しくあるよう願ったり、権力(政治家)を批判したり…単なるラブソングは無い。
「健全なものなどない」というアルバム・タイトルが象徴するように、今作では現代に生きる人々の不安をテーマにしているが、サウンドは励ますかのように力強い。
やや構成が似ている曲もあるが、全体の統一感があるためか一枚通して聞いても飽きにくい。
お気に入りは、静かな始まりから波のように広がっていく美メロ「The Shadow Proves The Sunshine」、傷付いても希望を諦めないメッセージを込めた「Golden」と「We Are One Tonight」。
ちなみに彼らは人柄の良さでも知られていて、新曲はレコーディング前にライヴで何度もプレイして観客の反応を真摯に受け止めたり(必然的に曲の完成度も上がる)、チケット代を格安にしたりとファンを大切にしている。
チャリティー活動にも熱心で、今作の制作前に訪れた南アフリカでは感銘を受けた子供達の聖歌をCD化。売り上げを支援に回しているとか。
インタビューを読んでも「いい子ちゃん」じゃなく「いいヤツ」って感じで好感が持てる。
やっぱり大海原と向き合っていると心が広くなるんだろうか。

ポップ・アイコン度 ★★★★★
1989年リリース、マドンナの4thオリジナル・アルバム「Like A Prayer」。
マドンナは「Like A Virgin」が強烈すぎて何となく敬遠していたが、食わず嫌いはよくないので中古輸入盤300円で試し買い。
結論から言うと、ファンにはならないまでもなかなか良いと思った。
80年代はとにかくシンセを多用したキャッチーなダンス・ミュージックが主流となり、ポップ・ミュージックが大きな進化を遂げた(「The 80's」参照)。
そんな80年代最後の年にリリースされたこのアルバムは音楽性だけでなく、マドンナという存在の集大成と言われる。
シンセを用いながらもただのポップではなく、ゴスペルやR&Bといった黒人音楽を取り入れたソウルフルな作品になっている。
他のアルバムを聞いていないので比較は出来ないが、かなりシリアスな内容。4年間続いた俳優ショーン・ペンとの結婚生活が破局を迎えた事も大きく関係しているようだ。
その影響が如実に現れているのがM4「Till Death Do Us Part」。
「死が二人を分かつまで」というタイトルだが、内容は終わってしまう男女の関係を歌っている。軽快なメロディーに痛烈な歌詞を乗せるところがマドンナらしい。
アルバム・タイトルであるM1「Like A Prayer」はゴスペルあり、グルーヴありで歌詞・楽曲ともに文句なしの名曲。ただしこの曲のMVは聖痕や十字架のパフォーマンスでカトリック教会などから批判を浴びたいわくつき。
他にも力強いメッセージのM2「Express Yourself」、母親についてのM5「Promise To Try」、父親との関係を歌ったM8「Oh Father」など、マドンナの内面が数多く歌われている。
異色なのはM3「Love Song」とM6「Cherish」。
「Love Song」はなんとPrinceとのデュエット曲。'58年コンビによるマイケル・ジャクソン(同じく'58年生まれ)への当てつけか?プリンスのファルセットとマドンナのセクシー・ヴォイスが絡み合った何とも奇妙な曲。実はあまり好きじゃない。
「Cherish」はアルバム中もっともポップなナンバー。オールディーズを現代風にアレンジしたような明るいメロディーとコーラスで、歌詞もキュート。
お気に入りは「Like A Prayer」「Express Yourself」「Cherish」かな。

軽快度 ★★★★★
1994年デビュー、ノース・カロライナ州出身のピアノロック・バンド、ベン・フォールズ・ファイヴの1stアルバム(1995)。
メンバーはBen Folds(vo,piano)、Robert Sledge(ba)、Darren Jessee(dr)の3人。ギターは無し。
ギターレスのピアノ・ロックといえばKeaneなんかもいるな。
キーンの魅力が英国らしい叙情系サウンドであるなら、BFFはやはりアメリカのバンドと言うべきか、明るく軽快な楽曲が持ち味。そこにパンク・ロックなスパイスを効かせた感じ。
BFFを知ったのは「Paino Songs」というコンピレーションCDに入っていた「Jackson Cannery」。
イントロのキャッチーなピアノに始まり、ポップでリズミカルな曲調に惚れた。
スタイルが確立されている印象を受けたのでキャリアのあるバンドかと思いきや、デビュー作の一曲目。ビックリだ。
デビュー・シングルである「Underground」やパンク風な「Julianne」、美メロ・ナンバー「Philosophy」など、表情豊かなピアノ・テクを堪能できる。
ギターレスを感じさせないのもすごいが、ハメの外し方をわきまえているな、という印象。
予測できないコード進行なのにコントロールされた突っ走り方がジャズの即興みたいだ。
こういうバンドはなかなかいない。
日本でも人気を博したが残念ながら2000年に解散(ベンはソロで活躍中)。
リリースされたアルバムは4枚のみだが、2ndの名曲「Brick」やチャリティーCD「No Boundaries」収録の「Leather Jacket」などを残している。
余談だが「Kate」のMVを見た時はゲイビかと焦った。
さすがBFF、イイ感じにイカれてるな。

肉料理度 ★★★★★
とても美味そうな名前のロック・シンガー、ミートローフ。
主食がミートローフなのかと問いたくなるような巨体から繰り出される迫力のヴォーカルが武器。
1969年の「Meat Loaf & Stoney」でデビューしたが、実質的には'77年発表の「Bat Out Of Hell」(画像)がキャリア出発点。
邦題「地獄のロック・ライダー」と名付けられたこのアルバムは、現在3700万枚以上のセールスを記録し、続編も作られた。
この作品を簡単に言うと、「なんかスケールでけぇ!」って感じかな。
作詞・作曲を手掛けたジム・スタイマンのロック・オペラ的な楽曲と、時にパワフルに時に繊細に歌い上げるミートローフの見事なマッチング。
オープニングを飾る10分弱の大作「Bat Out Of Hell」に始まり、正統派ロックやバラードを通過して、壮大に展開する「For Crying Out Loud」で締める。
中でも女性ヴォーカリスト、エレン・フォーリーとのデュエット曲「Paradise By The Dashboard Light」が一番好きだ。
これもオペラ風の失恋ソングだが3章に分かれていて、女と男の掛け合いで進行する。
ラブラブなカー・セックス→結婚を迫る女、焦る男→昔は良かったなぁ…という内容で、途中で入るカーラジオの野球実況がまた皮肉。
全7曲だが一曲一曲がかなり濃い。
ジャケットも濃いぜ!







