太陽の首都

つぶやき以上レビュー以下な雑感サイトです
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真保裕一「防壁」 

防壁 (講談社文庫)
命がけ度 ★★★★★
あらすじ:SPの佐崎が警護を務める政府の要人が襲撃された。同僚で義兄でもある大橋が身代わりとなるが、佐崎の脳裏に浮かぶ狙撃犯は意外な人物で…

冬山を舞台にダイ・ハード並のアクションが描かれた「ホワイトアウト」に続いて2冊目の真保裕一作品。
てっきり一つの話で丸ごと一冊かと思ったが、表題作の他に3話入った短編集だった。
各話同士に関連性はないが、共通するテーマは主人公が「特殊公務員」であるという事。
「防壁」は政府要人の警護に当たる警視庁警護課員(SP)、「相棒」は海上保安庁特殊救難隊員、「昔日」は陸上自衛隊不発弾処理隊員、「余炎」は消防庁の消防士と、いずれも危険と隣り合わせの職業だ。
一般にはあまり知られていない彼らの活動内容を、徹底した取材のもとリアリティーあふれる物語に作り上げている。
二重に張った身辺警護の枠や潜水時間の限られた中での救出活動、厳しい訓練の様子などが圧倒的な迫力と緊張感を持って描かれ、情景がはっきりと頭に浮かぶようだ。
と同時に、主人公がプライベートで抱える問題もストーリーを大いに盛り上げている。
危険な任務につく特殊公務員たちも、仕事の外では女性との関係に悩まされる一人の人間であり、それが読む側に共感性を生む。彼らが日常の悩みをどう克服するかというドラマ部分も見どころだ。
ただ読んでいて気になったのは、主人公がやたら疑心暗鬼になりすぎるというか、悪い方向に考えすぎな感じがする。
ストーリー上の起爆剤になっているのは分かるが、危険な任務中にアレコレ悩む暇あるのかよと…。
とはいえ短編の中にこれだけのディテールを盛り込み、苦悩や葛藤も描き出した内容の濃さは読み応え充分。中でも水深35mの海底で時間との闘いを迫られる「相棒」が好きだ。
「ホワイトアウト」もそうだがこの著者の作品はアクションとドラマのバランスが良く、映像化に向いていると思うので是非やってほしい。
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[ 2009/03/12 23:59 ] 作家 あ~な行 | TB(0) | CM(2)

荻原浩「オロロ畑でつかまえて」 

オロロ畑でつかまえて (集英社文庫)
田舎度 ★★★★★
あらすじ:超過疎化にあえぐ日本の秘境・牛穴村が村の起死回生を賭けて手を組んだ相手は、倒産寸前のユニバーサル広告社。この最弱タッグによる、やぶれかぶれの村おこし大作戦『牛穴村新発売キャンペーン』が、今始まる―。

以前読んだ「ハードボイルド・エッグ」が面白かったので2冊目。
第10回小説すばる新人賞を受賞した荻原浩のデビュー作。
ド僻地の牛穴村住人と、ドン底の広告代理店が繰り広げるドタバタコメディーだ。
サリンジャーの名作をパロったタイトルからして予感がしたが、中身も予想通りおバカだった(いい意味で)。
こういうユーモア小説はキャラクターの個性とアイディア、それに勢いが大事だと思うが、本作は見事なバランス感覚で成り立っている。
村おこしのため上京してきた村の代表、慎一と悟。訛りが激しくマイペースな悟と、方言と標準語を話せる“バイリンガル”の慎一。キメてるつもりで普通に田舎丸出し。
一方、依頼を引き受けるユニバーサル広告社もインパクト大で、初っ端からコンドームのキャッチコピーを練りまくるシーンで始まる。掴みはバッチリだ。
物語の核となる村おこしも「恐竜捏造キャンペーン」というトンデモな作戦のもと、ネッシーならぬウッシーがお茶の間に巻き起こす騒動がにぎやかに描かれている。
著者は元コピーライターというだけあって各章のタイトルに業界用語を用いているが、その用語解説がひねくれた感じで良い。

短めの作品なのでサクサク読めるが、ラストにもう少しひねりが欲しかったな。中盤までの気合いが入った脱力ぶりのわりに、あっさり終わってしまったのが残念だ。
とはいえ下ネタに走らず、自虐的でも他虐的でもない純粋な笑いが本作には溢れている。馬鹿なんだけど清々しい馬鹿。
笑わせてやろうという気負いを感じない自然な文体は奥田英朗に近いと思う。
ニヤニヤからハハハまで、身近で分かりやすい表現に色々笑わせてもらったが、個人的に気に入ったのはこれ↓
「冗談の通じない優等生に、みんなで楽しんでいたイタズラの計画を知られてしまったようなもので、奴は必ず職員室に言いつけに行く」
絶妙なとこついてくるよなぁ。
[ 2009/02/03 00:11 ] 作家 あ~な行 | TB(0) | CM(0)

浅倉卓弥「四日間の奇蹟」 

四日間の奇蹟
カタルシス度 ★★★★★
あらすじ:ピアニストの道を閉ざされた青年如月と、脳に障害を持ちながらも天才的なピアノの才能を持った少女千織は、演奏に立ち寄った山奥の療養所で不思議な出来事に遭遇する。

2002年の第一回「このミステリーがすごい!」大賞、金賞受賞作。
といってもミステリーではない、と思う。どちらかといえばファンタジーのような。
とてもシリアスで感動的なストーリーではあるんだが、ちょっと現実離れした設定が最後まで気にかかってしまい、物語に入りきる事が出来なかった気がする。頭が固いのか。
というわけで、一般的な評価は高いようだが個人的には70点ぐらい。

メインとなる登場人物は3人。
事故で薬指を失った元ピアニストの如月敬輔、サヴァン症候群(詳細は後述)の楠本千織、そして療養所に務める岩村真理子。彼らが体験する奇蹟を描いている。
序盤は如月と千織が共に生活するようになった事情や、千織の障害に関する医学的な解説などが記されながら、舞台となる療養所へと向かう。
このセンターの人間関係というのが実に理想的。
一つの村のような助け合いの精神に基づく集合体となっていて、患者たちにも暗く閉鎖的な雰囲気がない。
センター全体を「家族」とするなら「母親」にあたる岩村の人柄も魅力的。
でも一体何が奇蹟なんだと思いかけた辺りで急展開。事件が起こる。
その出来事によって生と死、愛という問題に向き合う事になり、一気にディープな内容に…。
3人の辛い過去も絡みつつ、期間限定の奇蹟に追われるようにクライマックスを迎える。

全体的に静かな文体だが、度々登場するピアノを弾くシーンはなかなか激しい。
クラシックに疎い俺でも曲の主題や運指がしっかりイメージできるほど、説得力と迫力のある筆致が見事。曲を知っていればもっと良かったんだけどな。
一歩間違えば宗教的な思想になりかねない問題をうまく普遍的な物事として描いた癒しの一冊。
ただ、どうしても設定がなぁ…他の方法じゃ駄目だったのか…

サヴァン症候群とは:
[ 2007/08/02 22:54 ] 作家 あ~な行 | TB(0) | CM(0)

夏目漱石「こゝろ」 

こゝろ (角川文庫)
静かな衝撃度 ★★★★★
あらすじ:仕事にもつかず、奥さんとひっそり暮らしている「先生」。「自分は寂しい人間だ」「恋は罪悪だ」…。言葉の背景は謎のまま、私は先生の元をたびたび訪れるようになるが…

高校二年用のほとんどの教科書に採用されてきたという漱石の代表作。
多分この作品を読もうとする人間の多くは、高校での授業がきっかけじゃないだろうか。俺もその一人。
教科書に載っていたのは「先生と遺書」のごく一部だったが、その前に先生との出会いを回想する「先生と私」、大学卒業後の故郷での生活を描く「両親と私」の全3章からなる長編。

構成力・表現力ともに巧みで無駄がない。
前半で先生の謎めいた言動に複線を張りつつ、最後の章で全てが明らかにされる。
「先生」と「お嬢さん」と「K」、俗に言えば三角関係に陥るわけだが、利己心と倫理観の間で激しく葛藤する様子は圧倒的。
テーマも普遍的なので時代を超えて読み継がれるのも頷ける。

漱石といえば「浪漫」「流石」「兎に角」などの当て字や、「電力」「価値」「反射」といった造語を生み出した事でも知られている。
言葉に関する才能は筆力にも現われていて、精緻な描写に衝撃を受けた。最も印象的なのは次の一文。
「もう取り返しがつかないという黒い光が、私の未来を貫いて、一瞬間に私の前に横たわる全生涯をものすごく照らしました。」
この表現力。惚れたね。
初期の作品も読んでみよう。
[ 2007/07/02 22:56 ] 作家 あ~な行 | TB(0) | CM(0)

貴志 祐介「黒い家」 

黒い家
欲望の恐怖度 ★★★★★
あらすじ:生命保険会社で働く若槻は、ある日訪れた顧客の家で死体を発見する。保険金殺人を疑い、調査する若槻を恐怖が襲う。
第4回日本ホラー小説大賞、大賞受賞作。

昔、友人から借りた「ISOLA―十三番目の人格(ペルソナ)」がなかなか良かったが、今作はもっと面白い。
ホラーによくある「理由はないけど皆殺し!」という意味不明な殺人鬼とは違い、人間の欲望や狂気が引き起こすリアルな恐怖を描いているのが良い。
保険会社という設定もホラーには珍しい。著者自身、生命保険会社に勤務していた経験があるらしく、かなり詳細な内部事情が語られている。
犯人はすぐ分かるが、若槻が真相に迫り同時に追い詰められていく後半~終盤にかけての狂気の描写がすさまじい。思わず映像と音声を想像してしまうほどのリアルさ。
じりじりと静かに迫ってくるあの感じ、いやな汗をかくな。
タイトルである「黒い家」の邪悪さも文句なし。

最近栃木の事件でも話題の「保険金殺人」という現実に起きている問題をテーマにしたり、人間の行動を虫の生態になぞらえる点は上手いと思ったが、心理学の説明はちょっとどうかな、という感じ。作品的には必要なんだろうが…
あと若槻の恋人がタフすぎやしないか。俺だったら一生トラウマだ。
[ 2007/06/15 14:59 ] 作家 あ~な行 | TB(0) | CM(0)
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